米のチェックという無駄な時間。

母親の実家は、兼業農家だった。

今は祖父も祖母も亡くなってしまったけれど、私が小さなころは田んぼも畑もけっこうな規模感でやっていて、田植えや収穫も手伝っていた。畑に関しては基本、自分たちと家族に配るためのものだったから、あまり農薬は使わず育てていたと思う。収穫の時虫食いの野菜がたくさんあった。

 

時を経て、祖父母も高齢になり田んぼ仕事ができなくなったため、貸してほしいという方にレンタルをするような格好になった。

祖父母が施設に入り、やがて亡くなって…その田んぼが買われたのか、それとも実家の母か別のきょうだいが継いだのかは分からないけど、今でも同じ方が米を作っていて、毎年稲刈りが終わるとその米を30キロほど、実家に持って来てくれる。

そして、そのうち半分すなわち15キロを、我が家がもらっている。ありがたいことである。

 

で、この米。

栽培主がこだわりの人らしく、農薬や消毒を極力抑えて栽培していて、玄米の状態でもらって精米をすると、黒い斑点のある米がけっこうな確率で混じっている。カメムシの食害だ。

 

栽培主は「環境にいいことをしている」という思いが強いのだと思うけど、ここまで混じってると、はっきり言っていい迷惑、というレベルである。

本人たちはそのお米をどうやって食べてるんだろう。もちろん、そのまま食べても問題はないのだろうけど、「新米が炊けたよ!」と言って炊飯器を開けたら「雑穀米ですか?」みたいな状態なのは、さすがに気持ちが悪い。

 

だから、精米するたびにかなりの時間をかけて「黒い米を除く」作業をしなくてはならないのだが…この作業がほんとに、「あー、無駄!」という以外にない。

無言でボウルに手を突っ込み、黒い米をちまちまと除くだけの作業…ああ、無為。

 

そして、農薬や消毒を控えているその米が、抜群においしいか、というと、これがまた、「うーん、まあ、それなり」の味なのだ。分かりやすくおいしければ多少の苦労はいとわないのだが、どこまでも「微妙」。

 

そういう状態なので、おととしは「うちはもういらないよ」と言って15キロの米を断った。実家には申し訳ないことをしたけど、黒い米を除く作業にかける無為な時間を思うと、普通にきれいなお米を買ったほうがいいと思ったからだ。

 

でも、去年は例のコメ不足を経験し、田舎の我が家でも「ギリギリ足りないかも」というところまでお米が枯渇した。新米の時期に間に合ったから「お米がない!」という状態は避けられたけれど、やっぱり通常より高い価格で売られているから「お、おう」という気持ちになる(適正な価格であるということは十分承知している。米農家の皆さんには頭が上がらないです)。

 

そういうわけで、去年は「もらいます」と言って実家から10キロの玄米を引き取った。去年精米機を買ったので、5合ずつ精米し、そのたびに20分ほどかけて黒い米を除く、という作業をしている。あー、無駄。無為な時間…でも、お米がもらえるだけでもこのご時世、かなりのアドバンテージだ。

ありがたいと言い聞かせ、日々黒い米を捨てているのである。